1981年

この年の最大ヒット漫画は、あだち充の『タッチ』でしょう。作者の大好きな落語が基となっていると思われるが、少ないセリフながらも、前後の構成とコマとコマのだけで心情をすべて描いてしまう超絶技巧は、後に大量発生するあだち風作品が総じて失敗している所からも作者の天性のものなのだろう。この頃のサンデーは、あだち充に代表されるラブコメ路線を猛烈にプッシュし始めていて、女性読者という新たな開拓地を生み出して売り上げを大幅に伸ばしています。ラブコメといったらサンデーという図式が成り立っており、雑誌の特色が大いに出ていました。
『ストップ!! ひばりくん!』も後に与えた影響は大きいと思います。鳥山明の出現に感化された作者は、ポップさとデザイン性という部分を大いに特化させて作風も変化させていき、それを突き詰めていった結果、漫画家という職業ではなくなってしまいました。天才は休載も許されるという風潮は、この作者から始まったことは間違いないでしょう。
『キャプテン翼』も重要な作品です。同時期に起こったサッカーブームに乗っかった形でもあるのですが、この作品がなかったら日本のサッカーのレベルはもう少し遅れていたといっても過言ではないはずです。まあ、面白いサッカー漫画がこれくらいしかなかったというのが一番の理由ではありますが。とりあえず、オーバーヘッドキックをしようとして、地面に頭を打ち付けたたくさんの子供たちの中からプロのサッカー選手が生まれたのは間違いない事実です。

そんな1981年に連載され、このサイトで紹介している作品の中から漫画史的に重要な作品、単純に面白いと思う10作品を選びました。

第1位 タッチ …ラブコメブームの火付け役。コマの間で心情を表現するという高等な技術。

第2位 ストップ!! ひばりくん! …性同一性障害のキャラの最初期の作品。連載が不安定という部分ですら魅力。

第3位 ブラック・エンジェルズ …少年漫画とは思えない鬼畜な所業と殺しの数々。

第4位 キャプテン翼 …日本サッカーのレベルを引き上げた最大の功労者。

第5位 六三四の剣 …緻密な絵と一人の人間の成長ドラマ。方言もよい。

第6位 気分はグルービー …元祖バンド漫画。ツンデレの元祖でもある。

第7位 ジャスティ …本格SF漫画。哲学的な話もある。

第8位 特救GO! …海上保安隊という特殊で面白そうな職業を題材にする慧眼。

第9位 光の小次郎 …全球団を作者自身で考えてしまうという、妄想野球の申し子である作者の本領。

第10位 たまねぎパルコ …メタギャグの面白さ。