リングにかけろ

作者 車田正美
掲載誌週刊少年ジャンプ
掲載期間 1977年2号~1981年44号
話数全242話
巻数全25巻
設定★★★★
キャラ ★★★
ネーム★★★★
画力★★★

『ただ毎日生きているというだけじゃ 一生クソおもしろくないのが当然 だから行動することによってそれを見つけるんだ』

作品解説

ボクシング選手だった父親の影響でボクシングバカになった高嶺菊は、いつも泣いてばかりいる弟の竜児を世界チャンピオンにする夢を持っていた。死んだ父親に代わって義父になった男の暴力に嫌気がさした姉弟は、二人だけで東京へ上京する。何もわからない東京にとまどう二人だったが、たまたま知り合った富豪の人の親切で一緒に暮らすことになる。そして、竜児を世界チャンピオンにするべく、特訓の日々が始まる。
ジャンプの歴史を語る上で欠かせない重要な作品。初期のころは、貧乏を乗り越えて・・・という当時の主流だった設定の普通のボクシング漫画だったのだが、ある時からスーパーブロー対決のボクシング(というよりバトル)漫画になっていく。そしてこの後半部分こそが、後のジャンプ漫画・・・ひいては少年漫画全体の方向性を決定付ける重要な要素を含んでいる。それは、ジャンプ三大原則として有名な「努力」「友情」「勝利」とは具体的にどういうことなのかというのを、この漫画が見事に体現しているからに他ならない。「努力」とは、努力した証明として必殺技の獲得を意味する。必殺技は必ず大ゴマで決めなければならず、これは歌舞伎でいうところの見得にあたる。地味である練習(努力)でストレスを与えた上で、必殺技による開放を見せることで読者は非常に満足感を得ることができる。また、すべての必殺技を覚えたいという収集本能を刺激して、単行本の売り上げを伸ばすという重要な役目も果たすことになる。「友情」とは、サブキャラの重要性を意味する。今日の敵は明日の友ということで次第に戦う仲間が増えていき、その仲間は主人公にはない部分を補う役目を果たす。狂言回し&ギャグ担当としての「熱血」(石松)、解説&ツッコミ担当の「アニキ」(志那虎)、ライバル&女性人気担当の「クール」(剣崎や河合)などのキャラを配することで、物語と読者の幅を広げる効果がある。ジャニーズグループのように、たくさんの中のどれかはその人の好きなキャラがいることになり、結果漫画そのものを応援するということになるのだ。「勝利」とは、勝利することが目標になるようにトーナメントなどのわかりやすい展開にすることを意味する。共通目標ができるので読者からの共感が得られやすくなる上に、作者のほうもある程度展開が定まっているので、ネームに悩む時間が縮小されるという、ウィンウィンな関係を築くことができる。以上の原則に合わせた漫画を連発することで(ときには無理矢理にでも)、ジャンプは未曾有の黄金期を迎え、また、他の雑誌もこれを追従するようになっていったのである。このように、以降のジャンプ漫画のお手本となった本作ですが、1点だけ例外があり、それは人気絶頂のまま巻頭カラーで物語的に大団円で終了しているというところ。ごく一部の例外を除き、どんな人気作でも、ぞうきんを万力で絞るようになかなか終わらせてくれないジャンプだが、このあたりも他の漫画のお手本にしてもらいたかった。

関連作品 『リングにかけろ 2』 連想作品がんばれ元気
前作スケ番あらし次作風魔の小次郎
JCS版 文庫版 新装版
全15巻全15巻 全18巻